夏が近づいてくると、気になってくるのが熱中症(熱射病)。
車内や室内に赤ちゃんや幼児を残していき、死亡させてしまう悲しい出来事の報道が多くなってくる。ほんの数10分だから大丈夫だよねという油断が命取りになる。
でも、熱中症の危険は、犬の場合、人間よりももっと高い。
犬には汗腺(汗を出す腺)がないので、人間のように汗をかいて体温を下げることができないからだ。
Contents
熱中症の原因と起こしやすい犬
熱中症が起こる条件
- 高温
- 換気不良
- 高湿度
犬は寒さには強いけれど、上述したように汗で体温が調節できないため暑さには弱いので、室内、車内、狭い犬小屋内などで上記の3つの条件が重なったり、夏の炎天下での散歩や運動を行ったりすると、体温が40℃を超えるまでまたたくまに急上昇し、そこから下がらなくなる。
ちなみに犬の標準的な体温は、小型犬の場合38.6~39.2℃、大型犬の場合37.5~38.6℃。
<体温の測り方>
人間用の電子体温計を用いてもかまわない。
- 先端にラップを巻いて、オイルを塗っておくと肛門に入りやすい
- 犬の身体を支えておいて、体温計を肛門から直腸内に3~5㎝差し込む。
こちらの動画が参考になる。
40℃を超えていたら、すぐに病院に連れていこう。
熱中症を起こしやすい犬
- 太った犬-体脂肪が多いと熱の発散がうまくいかない。
- 短頭種の犬(ブルドッグ、シーズー、ペキニーズ、パグなど)-頭が短いので気道も短くなり、体温を下げる効率が悪い
そして、あるオーストラリアの学術調査によると、
When the dogs were grouped into dark (black, blue, brindle) and light (fawn and white), the mean increase in temperature of the dark-colored dogs was significantly greater than the mean increase in temperature of the light-colored dogs.
(犬を毛色の暗い色(黒、青、ブチ)と明るい色(淡い黄褐色、白)に分けたところ、温度上昇率は暗い色の群の方がかなり高かった)
運動をさせた後に体温の上昇率を調べた場合、濃い色の犬の方が体温上昇率が高く、熱中症リスクも高いという結果が出たようだ。
我が家のブラック(今はシルバーに近い)プードルも危険性が高い?
あたしも気をつけなくちゃね!
熱中症の症状
では、熱中症はどのような症状で現れるのだろう。一番分かりやすいのが、
「ハアハア」
と舌を出し、苦しそうに息をする「あえぎ呼吸」。
<初期症状>
- 体温が急激に上昇する(体温計で測れない場合は、耳やお腹などの体温が分かりやすい場所を触って熱くないかどうか確かめる。)
- 呼吸が早く、激しくなる(あえぎ呼吸)
- よだれを垂らす
- 脈拍が早くなる
- 口の粘膜が赤くなる
- 食欲がなくなる
<進行症状>
- 嘔吐や下痢を伴う
- 痙攣を伴う
- 意識がもうろうとなる
- 脈拍が弱まり、呼吸しづらくなる
そして、最後には死に至ることさえある。
初期症状が現れた時点で、早めに応急処置をほどこし、進行して悪化しないように防止することが大切だ。
熱中症の応急処置は?
次に、応急処置について説明しよう。
1.換気をよくする
- 風通しのよい場所に連れていく
- 屋外の場合は屋内に移す
- 動かせないときは、窓を開けたり、扇風機をあてたりして換気をよくする。
2.水を与える
ワンコが自分で水を飲める場合はどんどん飲ませる。
3.身体を冷やす
- 水をかけたり、水に濡らしたタオルを掛けたりして、風を送る(気化熱の原理)
- 冷やしたタオル、または保冷剤や凍ったペットボトルなどをくるんだタオルで、脇の下や脚の付け根を冷やす
4.その他
よだれをぬぐって呼吸しやすくしてやる。
通常は、初期症状が発生してから30分~1時間程度の間に適切な応急処置を施すことで、回復する可能性は高い。
でも初期症状の発生から2,3時間が経過して、40℃以上の体温が続いたままだと、予後不良を起こしたり、後遺症が残ったりすることがある。
このように、応急処置はとても大事だ。
その後、体温が正常に戻っても、また上昇する可能性もあるので、安静にして様子を見て注意する必要がある。
病院では、熱中症により、血液中の酸と塩基のバランスが狂ったり、血液が凝固したり、脳に浮腫が起きていたりしていたら、適時、輸液などの治療を行う。
熱中症対策をしよう
屋外での対策
● 炎天下での散歩や運動を避け、早朝か夕方にする
● 屋外の犬小屋は日陰の風通しのいい場所に設置する
● サンシェードやよしずなどで日よけを作る
● 常に新鮮な水を用意しておく。水遊びの好きなワンコなら庭にプールを置いておくと自由に遊んでくれる。
屋内での対策
● エアコンの温度は外気温からマイナス5℃くらいと言われているけれど、常に23~28℃くらいに保っておきたい。子犬、老犬、病気の犬などは温度に注意が必要。
● アルミボードやクールマットなどの商品も利用したい
ここで一つプチ情報。
暑そうだから刈り上げにしちゃおうかな
と真夏は安易に「サマーカット」をオーダーしてしまいそうになる。
でも、地肌が見えるくらい刈り上げてしまうサマーカットは、実は夏にはかえって危険なこともあるのだ。
毛は、太陽の熱、地熱、道路からの照り返しの「熱」、そして強い「紫外線」から肌をブロックする重要な役割を果たしている。
この毛というバリアがないと直射日光で熱射病のリスクも高まり、皮膚にもダメージが生じる。
もう一つ、人間にも共通するように、冷房が効いた屋内に入ったときの「冷えすぎ」も防止できる。
今年の夏も元気に乗りきろう!